布流久佐は宿泊施設として運営するため移築後、断熱改修や下屋根、キッチン、浴室などの増築作業を行っていきます。新築事業に比べ、リノベーションと同様、今ある建物の状態を確認しながら臨機応変に対応しなければならないため大工の目利きが必要になってきます。
既にあるものを生かしながら新しいものを融合していく試みは、布流久佐のコンセプトとして今尚息づいています。その土地の風土に生かされた建物や当時の暮らしの面影は、私たちに現代の便利な暮らしを見つめ直すきっかけを与えてくれました。建物を受け継ぐのであれば、日本の衣食住も大切にしたい、そんな想いから藍染工房や釜戸設置の構想が膨らんでいきました。
布流久佐の庭は人と自然が調和する空間設計がなされています。四季が織りなす風情を感じられる日本庭園には井戸を設置し、全館に井戸水が行き渡るようになっています。これは万が一、ライフラインが止まったとしても豊かな自然環境を活かして釜戸で煮炊きをしたり、五右衛門風呂で身体を温めたりと地域の災害拠点にもなるよう設計されています。